| 〜 第４部 月に願いを… 〜 |
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第 24 話 |
あらがえない運命（２） |
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「旅の途中で呪いが少し解けたと言っていたな？確かにそれは呪術者が未熟なせいかもしれないが、元々マリエ自身が呪いの類にかかりにくい体質かもしれない。普通なら、赤ん坊ぐらいに戻されていたのかもしれぬ」 「まあ、それも面白そうですわね」 呑気に言うマリエに、イルシアは何が面白いんだと顔をしかめた。 赤ん坊の姿なのに精神は十九歳など気味が悪いだけではないか。 横目で彼女を睨みつけていたのだが、コーラルもまた、マリエを凝視しているのにイルシアは気付いた。 「なにかこう、マリエは今まで見てきた人間達とは少し違うような気がするのだが？それが呪術をかけにくくしてるのかもしれぬな」 「単に、性格が風変わりなだけだと思うけど」 迷惑そうに言うイルシアに、マリエはむっとする。 言い返そうとする彼女よりも早く、魔女が再び口を開く。 「人格がどうという事ではないよ。そう、雰囲気だ。どちらかと言うとマリエは魔物使い・・・と言うより、神々しさを感じる」 「あ、もしかして、母様の血が流れているせいでしょうか」 イルシアはそれ以上なにも言わないでくれと願ったのだが、マリエはそんな事も知らずに「わたくしの母は、月の女神なんですの」と事も無げに言った。 「女神・・・？」 それこそ目を見開いて魔女は驚いている。 絶対、信じてもらえるわけがないと思ったのだが、コーラルは暫く考えてから「なるほどな」と納得している。イルシアは納得できない。 「ちょっ・・・、ちょっと待ってくれ、コーラル。信じるのか？こいつの母親が神様だなんて・・・」 「・・・まあな。マリエの不思議な雰囲気の意味が納得いくしな。お前さんは信じてないのかい」 「えっ・・・」 横のマリエを一瞥して、 「いや、彼女の母親は確かに女神ルーナだ」 断定できる。 なんと言っても、ルーナの天誅を幾度となく目撃しているし、それに降臨したその姿を見たことさえあるのだ。 「ならば話は早い。マリエは呪術に完全に侵されていないのだろう。神の血が闇の呪術を一部、跳ね返したに違いない。それなら簡単な魔法語で呪いを解く事が出来るよ」 「本当ですか！」 マリエが喜びの声を上げた。 傍らのイルシアも、ほっと胸を撫で下ろす。 やっと、彼女の姿が元に戻る。 旅立ってから数ヶ月。永遠に彼女はこのままなのかもしれないと一抹の不安を抱いた事もあるが、幸運は味方してくれたらしい。 「ただし、今すぐには出来ない。マリエが呪術にかかりにくい体質であるのなら、当然、私の魔法語も効きにくい筈だ。そこで、こちらもホルビイの葉を使わなければならん」 「またあの煙を吸うんですの？」 あまりいい匂いではなかったのだろう。マリエは二度も嗅ぐなんて、という顔をしている。 コーラルは首を横に振った。 「ホルビイの煙を嗅いでも呪術に完全にかからなかったのだから却下だ」 「じゃあ、どうやって？」 「ホルビイの葉を液状になるまで煮て、それを飲んでもらう。煙という間接的なものより、直接体に作用するように飲んだ方が効果的な筈だからな」 その提案に眉間に皺を寄せたのはもちろん、マリエだった。
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