| 〜 第２部 真 実 〜 |
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第 ９ 話 |
巫女の危機（３） |
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「魔人は『忘れられた時代』にすべて一掃されたのだよ。そして今も扉は閉ざされいている筈だ。この人間界に、純粋な魔人の血を引く人間などいないのではないかね？」 それはそうだが、アサエルから漂ってくる邪気はただものではない。こうして話しているうちにも、それは段々高まってくるようだった。 不安げなマリエなど気にもせず、アサエルは続けた。 「魔人の血を受け継いだ人間の家系は、魔人の血が枝分かれして散らばらないように・・・そしてその呪われた血を後世に残さないようにと、血の継続を控えていた。自らの家系を途絶えさせる覚悟でね。だが、人間というのは子孫を残していく動物だ。証拠にカウンソン家は残っている。そして、その枝分かれした支族もね」 「・・・アサエルさんの家は、カウンソン家の支族だというのですか？」 彼は頷いた。 「遥か遠い昔のね。我がシーズ家は、魔人の血はほとんど受け継がれなかった血筋だが、君から見ると俺は少し、邪悪な気を放っているみたいだ。言っておくが、俺は魔物使いではないよ」 「あなたに漂う邪気は、あなた自身のものではありませんわ。なぜ・・・普通の人間の筈なのに、なぜそんな邪気が！？」 「ハハハ・・・さすがは巫女様だ」 突然、部屋中の蝋燭の火が消えた。 そしてアサエルの背後に、一本の光の柱が現れた。 照らされている彼は、先程とはまるで別人のようで、何かが取り憑いているようだった。 「確かに俺には、魔人の血など流れていないに等しい。だが君のように俺も人間界に残る、魔人の子孫のひとりだ。だから、魔界と接触するのは意外に簡単だったよ・・・」 「！」 「アメシア教に残る、高度な儀式だったがね。魔界王は俺の呼び掛けに応えてくれた」 無気味に笑うアサエルに、マリエは思わず後退りした。 「魔界王と通じ合っているのですか！？」 「まあね。王はいたく、この世界を気に入っている。この汚れ行く世界をね」 アサエルはマリエの二の腕を力の限り掴んだ。 「わ、わたくしをどうするつもりですか？」 痛みと恐怖でマリエの顔が歪む。 「人間界に魔界王が降臨するためには、魔界の扉を開かなければならない。バイブは『鍵』である君を生け贄にしようとしているが、まだ他にも方法があったんだよ」 やはりバイブのもくろみを知っているこの男は、彼女と同じ志を持つ者として通じ合っていたのだ。 それよりも、魔界の扉を開けるのにまだ他の術があるという話は本当なのだろうか？マリエが知っているのは、魔界の扉があるという世界のどこかで生け贄を捧げ、その血の儀式で扉が開かれるというものだった。 「知りたいようだね？教えてやろう。魔界の扉は一つじゃない。『扉』は、『鍵』である君もなれるのさ」 「・・・わたくしが、『扉』に？」 アサエルはマリエの顎に手をかけた。 「そのためには、君が魔界王の花嫁にならなければならない」
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